はじめに
これまでR MarkdownやQuartoでPDF出力をする際の方法として、TinyTeXを利用したLaTeXベースの方法が主流でした。しかし、TinyTeXは軽量かつインストールが用意とはいえ、日本語フォントへの対応やカスタマイズが難しい場合があります。
Typstは新しいドキュメント作成システムで、シンプルな構文と強力なレイアウト機能を提供します。QuartoはTypstをサポートしており、これによりPDF出力がより簡単かつ柔軟になります。また、何よりTypstはレンダリングの速度が非常に速いのが特徴です。
本ページでは、僕が作成した経済学系の学生の皆様に向けて作成したQuartoテンプレートを紹介し、その使い方を解説します。
個人的には修論くらいまでは対応できるテンプレートを目指したいので、不便な点などあれば随時コメントやご連絡をいただければ幸いです。
Typstを使うメリットとデメリット
Quarto×Typstで論文を書くメリットとしては以下の点が挙げられます。
- 高速なレンダリング: Typstは高速にPDFを生成します。
- 環境構築が不要: QuartoにはTypst CLIが含まれているため、Typstの別途インストールは不要です。
- 分析結果との統合: RやPythonのコードを直接埋め込むことができます。
- 低い学習コスト: Quartoで記述できるため、Typstを学ばなくとも通常のMarkdownに近い感覚で利用できます。
一方で、Typstはまだ新しい技術であるため、\(\LaTeX\)に比して機能が限定されている場合があります。また、Quartoでのカスタマイズ性が生のTypstに比べて制限されること可能性もあります。
QuartoでTypstを使う準備
今回のエディタはPositronを想定していますが、RStudioでも同様の手順で進められます。
参考までに、僕の環境を下に示します。
- R version 4.5.1 (2025-06-13 ucrt)
- Quarto 1.9.5
- Positron: 2025.11.0 build 83
RをインストールしていればQuartoも自動的にインストールされるため、特別な準備は不要ですが、特定のバージョンをインストールしたいときにはQuartoの公式サイトからインストーラをダウンロードしてインストールしてください。
YAMLヘッダーの設定
QuartoドキュメントのYAMLヘッダーでTypstを指定します。以下は基本的な設定例です。
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title: "Typstで論文を書く"
author: "あなたの名前"
date: 2025-10-19
date-format: "YYYY年M月D日"
format:
typst:
papersize: a4
margin:
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